岡本英子

岡本英子

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慶應義塾大学のキャンパスがあることでも知られる日吉は東急東横線・目黒線と、横浜市営地下鉄が走り、横浜や都内各地にもアクセスしやすい人気エリアです。

その日吉駅からバスで15分ほどの場所にあるヴィンテージマンションで暮らす北村淳さん、裕子さんご夫婦
「わたしの部屋」でも紹介した、海外のホテルのようなベッドルームと、古きを残してリノベーションしたリビングのある部屋に住むご夫婦です。

あまりに素敵なリビングとベッドルームだったので、今回「みんなの部屋」にも出演してもらうことに。どこかコテージのような趣のあるマンションの一角に、高まる期待を裏切らない心地のいい空間が広がっていました。

名前:北村淳さん、裕子さん
職業:ともに会社員
場所:神奈川県川崎市
面積:140㎡
築年数:34年



お気に入りの場所

季節の移り変わりを感じられる大きな窓

部屋に入ってまず目に入ってきたのが、この窓からの景色。開け放した窓からは、風に揺れる葉音や鳥の鳴き声が聞こえます

「この部屋に住みたいと思った理由のひとつが、窓から見える緑でした。森の中にある家のようで気に入っています。夏は緑が生い茂って、ツリーハウスみたいな感じになるんです」(淳さん)

「春は新芽が出て来るのが見えますし、桜も少しですが見えます。秋は落ち葉がすごいですが、季節によって見る景色が変わるのが気に入っています」(裕子さん)

無垢のフローリングを生かしながらリノベーションしたリビング

「わたしの部屋」でも紹介した、広々としたリビング。

家具のほとんどは、部屋との相性を考えながらトータルでコーディネートできるように、リノベーションを依頼した「スタンダードトレード」に作ってもらったのだとか。

家と家具が合っていない部屋にしたくなかったので、リノベーションするなら家具を中心にやってもらいたかったんです」(淳さん)

さらに、この家の持つ現状のかっこよさを生かすために、“残すものは残す”リノベーションにこだわったのだとか。

「業者さんによっては、『キッチンを新しくしましょう』と提案してくるところもあったんですが、このキッチンは気に入っていたので残したかったんですよね。

何社か相談した中でも『スタンダードトレード』さんだけは『このキッチンは残しましょう』と言ってくれて、自分とセンスが合うなと思ってお願いすることにしました」(淳さん)

学生の頃に建築を学んでいたという淳さんがディテールをベースに希望を伝えながら、3〜4ヶ月かけて改修。こうして味のある無垢のフローリングや、キッチンを生かしたリビングができあがったのです。

「リビングの広さと、いい感じに傷んで味が出ている無垢のフローリングがすごく気に入っています。

この家が造られた80年代当時は、無垢を使った全面フローリングの家は珍しく、ニュースにも取り上げられたそうです」(淳さん)

取材中、「いいですよね、このフローリング」と何度も言っていた淳さん。その愛情は相当なもののようで……。

いつもこんな風に大事に磨いているそう

「半年に1回くらいは全面にワックスをかけるんですが、私が洗い物をしていて水を飛ばすと、彼はその都度オレンジオイルで磨いています。そのくらい、このフローリングを愛しているみたいです。

今日も、皆さんが来る前に磨いてました(笑)」(裕子さん)

「家の素材を大事にしているので、フローリングはまめに磨きます。

無垢って敏感なんですよ。大事にしながら傷むのはいいですけど、何もしないで傷むのは残念じゃないですか。木材は生きてますからね」(淳さん)

会話が生まれるキッチン

広々としたL字カウンターのオープンキッチンは、裕子さんのお気に入りの場所。

「スタンダードトレード」に依頼し、既存を生かしながら、壁のタイル、黒い扉、カウンターをリノベーションしました。

「もともとあったものですが、このアナログなデザインのオーブンが気に入っています。

窓から覗き込まないと火がついているかどうかわからない感じが、またいいんです。毎朝このオーブンでパンを焼いています」(裕子さん)。

一緒に料理をするという淳さんと裕子さん。

L字カウンター越しに会話をすることも多く、友達が遊びにくると自然とこのカウンターに集まってきてみんなで立ち飲みするそうです。

そのカウンター下の収納には、お気に入りの食器を。扉がない分、取り出しやすく、使いやすいのだとか。

NYのホテルを参考にしたベッドルーム

平日は、家にいるときのほとんどの時間を過ごすほどお気に入りだという、ベッドルーム。

壁にプロジェクターで映画を映して見たり、本を読んだりして過ごすのだそう。

「NY旅行で泊まったホテルのベッドルームを参考に、高さのあるベッドと硬めのマットレスにしました。両方、IKEAで見つけたものです。

ベッドが高いと空気が良くて気持ちいいですよ」(裕子さん)

ベッドサイドにはトラックファニチャーのコットンの照明と、ラタンの照明が1つずつ。

「カントリーっぽい感じにしたくて、この照明にしました。

2つ置いているのは、本を読みたいときに両方ないと不公平感が出ちゃうので。素材を変えたのもこだわりです」(淳さん)

ポプリの香りがふわっと広がるメイクスペース

「いつもここでメイクをしています。鏡はアメリカのミリタリーです」(裕子さん)

デスクには、「サンタ・マリア・ノヴェッラ」のポプリが置いてあり、玄関までいい香りが広がっていました。

この家を買った理由

この家で暮らし始めて5年目という淳さんと裕子さん。もともと桜新町の賃貸物件に住んでいたといいますが、この家を選んだ理由はなんだったのでしょうか?

「エリアには特にこだわらず、半年くらい物件を見た中で、株式会社sum designの井出共治さんが手がけた百合ヶ丘の家に出会いました」(淳さん)

「斜面の魔術師」との異名を持つ井出氏は、斜面を生かした建築で有名な建築家。その物件に魅了されたのだそうです。

「でも、百合ヶ丘の物件は予算が合わなかったので、井出さんが手がけた他の物件を探していたら、この家にたどり着きました。他には全くない物件だったので、見てすぐに気に入って

ヴィンテージ感も良かったですし、玄関を開けた瞬間に広がる広い廊下も、巾木(はばき)の感じも好みでした。

でも、駅から遠いし、どうしようって1週間くらい考えたんですが、『あの家は絶対かっこよくなる!』って頭から離れなくて……。それで、買うことを決めました」(淳さん)。

巾木

「通勤には不安がありましたが、この家の唯一無二感が良かったので、ここに住むことは賛成でした」(裕子さん)

残念なところ

駅から遠く、自然との共存が必要な立地

「関東に住んで10年が経つんですが、もともと出身は沖縄で。この家で暮らし始めてから、自然に近いところに住むのはやっぱりいいなって感じています。空気もいいですし」(裕子さん)。

その一方で、緑に囲まれた立地に住むのは苦労することも多々あるのだそう。

「夏になると緑に覆われるので、光が入りづらいんです。東京では見たことがない虫も出たり、自然と共存するのは良くもあり、大変さもあります」(裕子さん)。

淳さんが「立地以外は140点くらい満足しています」と語るように、駅からバスかタクシーを使わないと家までたどり着けない不便さも、この家に住むために諦めた条件のようです。

お気に入りのアイテム

部屋の雰囲気を決める照明

照明は部屋をかっこよくするのに大事だと思っています。リビングの照明は、フランスのデザイナー、セルジュ・ムーユのもの。

ずっと気になっていたんですが、広いリビングにしか合わないので、この家に引っ越してから取り入れました」(淳さん)

この他にも、「イサム・ノグチ」をはじめ、淳さんのお気に入りの照明がたくさん。

アンティークやヴィンテージの家具


「ダイニングテーブルの椅子はトーネットやラッセルライトのヴィンテージや、ロイズアンティークです」(淳さん)。

よく行くインテリアショップは、アメリカのヴィンテージ家具などが揃う田町の「DEMODE BISHOP」だそう。

「ヒースセラミックス」の赤い花瓶と、台にしている切り株

「赤い花瓶はサンフランシスコの『ヒースセラミックス』で買いました。

台にしている木は、会社の先輩のお父さんからいただいた切り株。鳥取の県境にある原生林でもらってきたと言ってました」(裕子さん)

やちむんと、「ヒースセラミックス」の食器

裕子さんが沖縄出身ということもあって、使っている食器はほぼやちむん。結婚式の引き出物までやちむんにしたというほどのこだわりっぷりです。

そのほとんどは沖縄県読谷村のやちむんの里か、結婚式の引出物を揃えてくれた中目黒にある「58中目黒」で購入したのだそう。

朝食には、花瓶と同じ「ヒースセラミックス」の食器を使うことが多いのだとか。

「朝ごはんを食べるときはアメリカのレストランみたいなイメージで『ヒースセラッミックス』を。夕食は、やちむんを使うことが多いです」(裕子さん)

お酒好きなおふたりのキッチンには、大嶺工房の徳利とお猪口も。色あざやかなブルーがとっても素敵でした。

知り合いが手がけたアート

飯田梓さんのアート。透明なキャンバスの中に、ふわふわのファーが入っていました。

AYAKA FUKANOさんのアート

「知り合いの飯田梓さんと、AYAKA FUKANOさんの絵を飾っています。おふたりとも最近注目されているクリエーターです」(淳さん)

おふたりとは、淳さんと裕子さんがよく行くお店、「belts」がきっかけで知り合ったそう。

暮らしのアイデア

テレビは真ん中に置かない

リビングの中でひとつだけ気になったのが、テレビが中心から外れた場所に置いてあるということ……。

テレビが生活の主役になるのが嫌なんです

『スタンダードトレード』のデザイナーさんもその考えのようで、家の写真を見せてもらったら、うちよりもっと端っこに置いてありました」(淳さん)

その代わり、リビングのもう一方の壁にはプロジェクターの映像を投影して、スポーツ観戦や映画鑑賞をしたりするのだとか。

「スクリーンを置くのも大変なので、リビングの壁をスクリーン代わりに使っています。広くて白い壁があるのはありがたいですね」(淳さん)。

これからの暮らし

ディテールまでこだわってリノベーションした家ですが、また新しい住まいを創ってみたいと話す淳さんと裕子さん。

故郷の沖縄にも住まいがあったらいいなと思うこともあるのですが、まだ具体的なプランはありません。

次はこんな家がいいね、石の床にしたいねなどの話はなんとなくしますが、実現するかはわからないです」(裕子さん)

「ずっとここに住み続けられるかわからないですが、すごく気に入っているので、大切なものとして取っておきたいです」(淳さん)

何をするにも便利な都会とは違った、自然豊かなヴィンテージマンションへと移り住んだ北村さんご夫妻。

駅から離れた場所での暮らしは不便が多いのでは?と思っていましたが、それでも今の暮らしに満足しているおふたりを見ていると、生活を豊かにしてくれるものは利便性だけではないのだと感じました。

ひとつの出会いや、時間をかけて育てたものを大切にする北村さんご夫妻の暮らしは、これからも縁を紡いで繋がっていくのかもしれません。

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Photograghed by Kenya Chiba

岡本英子

フリーライター、薫物屋香楽認定・香司、水引アーティスト。ラジオのショッピング番組台本などを書いています。また、和の香り文化を伝える「香司」、水引アーティストとしても活動し、都内を中心にレッスンを行なっています。休日はヨガ、ピラティス、サウナで整えつつ、お酒を飲みながら過ごしています。好きな食べ物は餃子とソフトクリーム。インスタグラムでお香や水引の情報を発信しています。

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北欧、ストリート、DIY、アウトドア。リアルでさまざまな「暮らしのあり方」にフォーカスすることで、「自分にとって、一番いい暮らし」を探っていく…。連載「みんなの部屋」はスタイルを探求する旅です。

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